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執筆者の写真Hidetoshi Shinohara

調子っぱずれな、ピアノ

あるホテルのロビーで、自動演奏ピアノがラグタイムを奏でていた。 これを聞いて、僕はセロニアス・モンクを思い出した。


「Solo Monk」というこのアルバムは、1曲目から、ラグタイム調の「DINAH」という曲で、調子っぱずれなサウンドが、脳ミソをトロ〜リと、とろけさせてくれ、嫌なことを全て忘れさせてくれる。よきアメリカのミュージカルのように、スウィンギング!!ダンシング!!シンギング!!と思わず、満面の笑顔で両手を広げ、ひとり芝居。


ジャケットのイラストレーションは、僕の好きなプッシュピンスタジオのポール・ディビス。サウンドは、この絵のタッチにぴったりで、どこかトボケた感じの全曲ピアノソロ。



こんな下手なのか、うまいのか、分からないと思っていた演奏でも、モンクの練習量は半端じゃなかったらしい。一曲を自分の解釈で納得いくまで、毎日毎日いろいろな角度から吟味してからじゃないと、人前では弾かないというのだ。


モンクの息子がドラマーとしてデビューして、父親とヴィレッジ・ヴァンガードで演奏した。その時の父親の音楽的アドバイスは、その1回きりだったそうだ。「ドラマーの仕事は、リズムキープだ。それがしっかりできれば、後は装飾品のようなもの」と言われた息子は、ちょっと不満だったようだ。


しかし、息子はそれまで聞き続けてきた父親のピアノの秘密がそこにあったことを知った。つまり、「最低限のことを完璧に行う」という父親の厳格な姿勢が、そこで初めて理解できたようだ。これはデザインにも通じるものがある。


晩年、モンクは体調を崩し、このアルバムはその時のもの。それを知ったら、まるでピエロのように、ミストーンではないかと思う位のバラついたサウンドとリズムは、もの悲しくもある。

閲覧数:63回

8 comentarios


>uenchさま

どうですか、共感ということば? インパクとがほしいと、良く言われるけど、インパクトにだって 人それぞれ感じ方があるのですよね。 耳元で「ぅわぁっ!」って大声で叫ぶのだってインパクトだし、 何もない広大で真っ白い雪景色だってインパクトです。

黒人奴隷時代から語り始めるとつきないですね。 僕は、ブルースやジャズのブルーノートスケールが、 いかにして生まれたかを知りたくてルーツを遡っていったころがありましたけど。

このブログのバッドチューニングは、そのような ちょっとずれた心の琴線に触れることがテーマなのです。 共感ってなんだ?と思い始めたころから、共感するものを意識し始めたら みんなバッドチューニングなものばかりでした。

投稿者:hide★ :2007年2月23日 14:39

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>デザインも人を驚かすことをインパクトと解釈する人もいるけど、 僕は、見る人と一体になる共感の方が大事

ふむふむ、勉強になります。 それ、いつかコンペで使わせてもらうかも・・

奴隷としてアメリカ南部につれてこられた奴隷達から生まれたジャズは、ニューオリンズ→シカゴ→ニューヨークと、その舞台を移動しながら、変化してきていますね。工業の発展と戦争の影響、人々の認識の変化、また情報流通の発展と共に、ジャズというジャンルにとらわれることなく音楽そのものが変化を続けていますよね。混血を繰り返し表情を変えていく人種の歴史ように。植民地のフランスだったり、スペインだったり、ブラジルからの移住者だったり、音楽は、いろんな文化の融合で様々な個性に変化していきますね。 伝統を守り変わらない事も大切だけど、時代の流れを映し出すそういった音楽の向こうには、人々のどんな想いがあったのか興味あります。特に黒人差別の歴史と切っては離せないジャズは、そんな魂の叫びと、それに共感する知識人とが共に作ってきた世界が魅力なんですよね。

デザインと共通する部分というのは、芸術絵画がそれ一つで成り立つ個人の表現であるのにくらべ、デザインは社会のニーズと環境への影響を考えずにはなりたたない分野だということでしょうね。すべてをひっくるめて完成されたものであるならば、すぐれたデザインはいつか芸術として評価されるのです。 私は残念ながら社会によい影響を与える程の力はないですけど、興味深く見守っていきたいなという心境です。

ん〜!こんな事を話すとほーんと、時間足りません。 おやおや、こんなに誌面をさいて… そろそろ仕事にかからねば。 でも久々に満足しました。 ・・・と、去っていくuenchでした。(^。^@)/^^

投稿者:uench :2007年2月23日 09:02

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>香明さま

タイミングを外すリズムをシンコペーションというのですが、 ジャズミュージシャンはクラッシクから派生したわけではないようです。 クラッシクから、入った人もいるかもしれないけど、 もともとは、アフリカがフランスの植民地で黒人が奴隷だったころ、 ワーキングソングとしてブルースが生まれ、それがアメリカに渡り ジャズに発展していったようです。

だから、ブルースをインテリジェンスに複雑にしていったのがジャズ。 だから、昔の黒人ジャズプレイヤーは、みんなスーツを着てネクタイをしている。 白人に馬鹿にされないようになんとか対等に地位を確立したのだと思います。 そんな背景にフランス植民地時代のシャンソンの血が流れているという 説もありますが、僕自身の知識はそこまでです。 誰か知っていたら、教えてください。

投稿者:hide★ :2007年2月23日 02:28

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>N.Kojimaさま

なんだか、デザインにも通じると思いませんか? 何事も基本が大事というけど、基本って退屈じゃないですか? 若いうちは、これでもかって、テクニックをひけらかそうとするところが、 人間としてアオイのですよ。 僕は、自分に対していつもデザインしないデザイン。 つまり、過剰なデザインをしたくなる一歩手前で、 その衝動を押さえることが大事だと思っています。 子供頃、水彩画を描いてついつい、絵の具を塗りすぎて 失敗してしまうことが良くありました。 何事も地道な基本が大切なのです。

投稿者:hide★ :2007年2月23日 02:20

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>uenchさま

ラウンドミッドナイトの事を語ると、一晩かかってしまいます。 ジャズは、もともと黒人が白人に対して、インテリジェンスで対抗するために テンションコードを生み出したと聞いたことがあります。 それが、不協和音を感じさせるのだけど、不協和音とも違う。 さらにモンクは、隣の鍵盤も間違って触れてしまったような 不協和音を出します。 これが、計算してやっているのか、ミストーンなのかが、分からないですね。

ギターコードで、このジャズのテンションコードを押さえようとすると 指がちぎれそうになるような押さえ方です。

聴衆の息づかいと一体になるというのは、とても理解できます。 デザインも人を驚かすことをインパクトと解釈する人もいるけど、 僕は、見る人と一体になる共感の方が大事だと思います。 前者が、大音量のヘビーなロックだとしたら、 後者はライブスポットのジャズですね。

投稿者:hide★ :2007年2月23日 02:15

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美しく、輝く、輪を求めて。

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