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執筆者の写真Hidetoshi Shinohara

松の葉ずれ

今年の夏に帰省したとき、実家の松の剪定を手伝おうかと思ったら、庭師に頼んだらしい。40代まで何ひとつ親孝行をしてこなかったので、50代になって駆け込み親孝行である。そのひとつに実家の松の剪定と草むしりだ。


3年前から松の剪定を手伝っていたのだが、当初、コツがつかめず切り過ぎてしまった。夏など、まともに帰省したことがなかったから、実家のことなんか何も考えていなかった。何十年もの間、両親はこの庭を丁寧に育てあげてきたことに気がついた。僕は帰省しても庭の松を鑑賞するという、心のゆとりがなかったのかもしれない。 ここで少し、ペースダウンしてゆっくりと周りを見渡すということも発見があるものだ。松のバランスは奥が深い。デザイナー魂がむくっと起き上がった。あれから、いろいろなお宅の庭を拝見しては、心の中で「勝った!」「負けた!」などと意気揚々となったり、意気消沈したりと、自分でもなんと心の中は多忙なものかと思った。 う〜ん、それにしても庭師の仕事は流石だ。なんともいえない絶妙のバランスとはこのことか。右に倒れかかっている重心を左の細かい枝群が引っぱり上げている。レイアウトの法則と一緒だ。ここ、札幌、澄川の実家は、天気が良ければこの松の向こうに藻岩山が見える。 都会の喧騒から離れたひとときは、松の声に包まれ心を無にしてくる。滞在中、最後の日、晴れ男の僕には珍しく曇って風が吹いていた。風に吹かれ、松の葉ずれが奏でる音を慈しむ心を思い出せてくれた。そんな夏であった。

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美しく、輝く、輪を求めて。

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