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執筆者の写真Hidetoshi Shinohara

じゃじゃ馬

これは、車の話ではなく手のかかる可愛い彼女の話である。僕が乗っている彼女は、アルファロメオGT V6/3.2である。30年以上も続いた、最後のアルファ純正エンジンだ。現行の159、ブレラはすでにアメリカ製のGMエンジンになってしまった。

高速道路を気持ちよく走っていると必ずといっていいほど、ドイツ車のスポーツカーが追いかけてくる。その度に、もっとパワーがあり早い車に乗って見返してやりたいと思うのだ。でも、よくよく考えてみるとそんな挑発に乗せられる方がどうかと思う。日本男児たるもの、そんなことに動じなければいい。高速道路で走りに勝ったからといって、何になるのだともう1人の自分が、自分に言い聞かせる。

この彼女は、すごくクセが強くて、乗る人を選ぶ。ここ十数年間は、左ハンドルのマニュアルシフト。立体駐車場では、左から降りることはできない。路上パーキングでは、2ドアの幅が長くてしかもガードレールにぶつかり、わずかな隙間から降りなければならない。エンジンが横置きのせいか回転半径が長く、Uターンをしようとすると一発で切り返しができない。パワステであるにも拘らず、タイヤが太いのでステアリングが重い。信号待ちで、青に変わりアクセルを踏むとあっと言う間に90km/hは出て、一発免停。お巡りさんは、「この車は、早いんだよね〜」と笑いながら切符を切る。


銀座のど真ん中でボンネットから水蒸気が上がり、オーバーヒート。今時、ボンネットを開け、もうもうと白い煙が立ちこめている状態でレッカー車を待つ。まるで映画のワンシーンだ。数々の武勇伝をあげたらきりがない。老人の病気自慢のごとく、故障自慢では右に出る者はいないだろう。

それでも、修理から戻ってきて、本当に治っているのかどうか、エンジンをかけてみると、ボロボロボローーーーと、何とも言えないV6エンジンサウンドがたまらないのだ。まるで、美人だけれど、わがままで手の付けられない彼女のような感じ。(そんな彼女とはお付き合いしたことはないけれど)自宅のガレージでは、乗らない日も毎日うっとりと眺める。


なんて美しいボディラインなんだろう?ヒップアップされ、きゅっと締まった後ろ姿は、スタイルのいい美女の後ろ姿をいつまでも見ているような心境だ。しかも社名はロメオときたものだ。マークは、ヘビに十字架。こんな官能的な彼女は、ちょっといない。

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美しく、輝く、輪を求めて。

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