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執筆者の写真Hidetoshi Shinohara

Orange Devils ローズパレード2018

悪魔に取り憑かれてしまった。毎日、インターネットで観ない日はない。2018年前後位から、スマホで簡単に高画質の動画を撮影できるようになったので、検索すると大量に出てくる。世界中の人々が動画投稿しているのだ。


引用:YouTube 慶次郎前田


ローズパレードとは、アメリカのカリフォルニア州で行われる、カレッジフットボールの前に祝賀パレードを行う。世界中から応募があり、事前にビデオ審査があって約20バンドが出場する。通りの両サイドには何十万人もの観衆が見物する中、全長約9kmの幹線道路を約2時間かけて休みなしで演奏行進する。


引用:YouTube 慶次郎前田



出演バンドは、Pasadena City College のRobinson Stadium で行なわれるバンドフェスタに12月29日と30日の2日間3公演に出演しなければならない。京都橘高等学校は、12月29日にディズニーランドのパレードにも参加した。


2012年は、ビデオ審査で京都橘高校が出演して、見事ゴールド賞を受賞。一度、出演すると同じバンドとして6年間出演できないという縛りがある。2012年の演奏とダンスとステップが、圧倒的に他の世界中のバンドを寄せ付けなかったので、2018年は無条件で出演し、さらに無審査でゴールド賞を獲得した。激しいダンスとステップ刻みながら高度な演奏をするスタイルが、世界中どこにもない唯一無二の存在だったので、Orange Devils(オレンジの悪魔)と賛辞を込めてアメリカ観衆から異名をもらった。


(世界中の賛辞コメントは、昨年のブログ、台湾遠征で詳しく描いたのでそちらを読んでいただけたら幸いです)


2018年のローズパレードには、現役1年生から3年生まで約100名とOB、OGの卒業生約100名も参加、総勢約200名で参加した。


このバンドの見所は、パレード中の演奏が誰一人として音のズレがないところだ。多くのマーチングバンドは、数名のパーカッションの多少のズレが、不協和音が生じサウンドの雑さを感じるのだが、このバンドの強みは、パーカッションがしっかりしたリズムを刻み他の楽器がそれに乗ってメロディを奏で、誰一人ほとんどミストーンがない。顧問の横山先生が大事にしている「調子に乗らず、拍子に乗れ!」という口癖をメンバーの生徒が忠実に守っている。


引用:YouTube 慶次郎前田


全員演奏技術はすごいけれど、もう一人紹介するならば、アメリカ人、いや世界中のマーチングバンドファンを虜にした、笑顔が最高に素敵なザイロフォン(木琴)奏者が圧巻だ。ネット上では、木琴ちゃんと呼ばれているけど、後にO-VILSに参加することになる。激しいダンスとステップで、高速連打を叩き出し、目を閉じて聴いても200名いる奏者の中で木琴の音が際立って聴こえてくるのである。彼女が木琴を高速連打で演奏しながら、観衆の前を通り過ぎるとアメリカ人は、「オーマイガー!」を連発する。


引用:YouTube 慶次郎前田


エンターティメント性と、一人一人のスター性がこのバンドの魅力となっている。他のマーチングバンドは、ミリタリーを根幹にしているので、フォーメーションが一糸乱れず、ロボットのように行進するが、このバンドは動きが激しくそのうち隊列は乱れ、周りの観衆にハイタッチで応え、軍隊のような厳粛な感じが吹っ飛んでしまっているところが人気の秘密なのではないかと思っている。曲の途中に「レッツ、ゴー!」とか「キャー!」と奇声を上げ、一瞬隊列がぐちゃぐちゃになって、ハイタッチをしたり、まさに「元気いっぱい、笑顔いっぱい、夢いっぱい」の理念を生徒達全員がそれを体現しているところに観衆の感動を誘うのであろう。


引用:YouTube 慶次郎前田


前夜祭のロビンソンスタジアムでのフィールドドリルでは、MCのアメリカ人男性から「みなさんを太平洋の向こうへお連れします!」という最初の挨拶が洒落ていた。さらにSing Sing Singのダンスと演奏は圧巻でありそれを観れば、Orange Devilsといわれる所以が誰もが納得するだろうというようなことを言っている。この生徒の中に義足の女の子がいて、MCの男性は前に出て来るように観客全員に彼女を紹介する。この年のパレードにスターが多いのだが、金丸仁美さん(ニックネームはクララ)というフルート奏者に世界中の人々や多くの障害者を勇気づけたことであろう。生まれつき、左脚の膝から下がなく義足で参加しているにも関わらず、泣き言を言わず他の生徒達と同じメニューで厳しい練習に耐え抜いてきたからだ。彼女が1年生の時、吹奏楽部に入部した頃、成長期と相まって義足と膝の接合部が擦れて激痛が走ったそうだ。夏休みに骨を削る手術をして、義足を作り直しリハビリをこなし、休み明けには練習に復帰したという。


義足の少女がアメリカの観衆に紹介される        オレンジザウルスと主催者


引用:YouTube 慶次郎前田


彼女は、この時、3年生でフルートパートのパートリーダーを務めて、後輩達の指導にあたる。

本人は、特別扱いはされたくはないと思うが、激しい演奏とダンスの時は、つい心配になって思わず200名の中の彼女を探して目で追っている自分がいる。当然、アメリカのメディアに注目を浴び、アメリカの大学生達のマーチングバンドと交流を深めていったところは、老婆心ながら心の底で「良かった!良かった!」と胸を撫で下ろすのである。


インタビュー記事がインターネット上の掲載されているが、小さい頃は人と違う自分が嫌でスカートを履くのも嫌だったそうだ。それがある時期から、そんなことを考えていても仕方が無い、それも一つの個性だと考えるようになったそうだ。


話が義足の少女クララが中心になってしまったが、このスタジアムでの演舞も素晴らしく、古き良きアメリカのジャズを感じさせたり、楽しさと格好良さとひょうきんさ、ユーモアもあり、塩ビのオレンジ色のテラノザウルスでアメリカ人を笑わせたりと20分があっという間に過ぎ去ってしまう。


演奏と演技は、とても素晴らしく観ていて楽しいのだが、僕は、ここまでこのスタイルを築き上げるまでにどれだけの時間を費やし、努力してきたのかと思うと言葉に言い尽くせない。15才から17才位の子供達がたった3年間でこれだけのことをやり遂げるなんて信じられるだろうか?この溢れる笑顔の裏には、毎日、先輩達には厳しい指導を受け、演奏だけではなく体育会系の乗りで体感を鍛え、ダンスのトレーニングまで行い、泣きながら練習をこなす。それを考えただけで、涙が溢れるのである。青春の輝きとはまさにこういうことで、誰もがタイムスリップできるならば、あの仲間に加わっている自分を想像するのではないだろうか?卒業後はそれぞれの道へ進むと思うが、この子達が、将来必ずこの経験を生かし、全員が幸せになることを切に願うのみである。もう一つ忘れてはならないのが、顧問の田中先生と横山先生の生徒主体の指導。横山先生は、この元日のパレードの前夜、交通規制された9キロのコースを一人で歩いて最終確認したとか。


僕は、この小悪魔達にすっかりと魂を奪い去られてしまった。



※2018年ローズパレード他の出演団体と比較すると、いかにこの高校生達が異彩を放っていることがお分かりいただけるだろう。


#京都橘吹奏楽部 #ローズパレード2018年

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美しく、輝く、輪を求めて。

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