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執筆者の写真Hidetoshi Shinohara

コンポジション006

ひとつバランスが崩れると、ガラガラガラッと音をたてて崩れ落ちていく。そんなことって、ないだろうか?上の部分が重くて、下が小さなものが支えているときはそんな感じである。

僕がまだ18才の頃、夏休みに札幌へ帰省して、家具店のバイトをしたことを思い出した。配送センターから次々と大きな家具をトラックに積み込んで、運転手さんと一緒に助手席に乗ってお客さんのところへ運びに行く仕事。お客さんのところへ着いたら、トラックの荷台の扉を開けて大きな家具を担ぎ込む。 僕は、いつも職人のおじさんのサポート役だったけど、ある日、「おい、小僧。やってみるか?」と言われて、僕は調子に乗って「はいっ!」と言ってしまった。 倉庫で、おじさん達が大きなタンスを一旦、膝の上に乗せ、それをひょいっと肩に担ぐのを見ていた。タンスが大き過ぎておじさんの体が小さく見えたけど、タンスの重心の下に体を入れると支柱の役割になり意外と安定することに気付いた。 そのイメージを現場でやってみた。担げた。それを玄関まで運ぶ。庭の砂利に足をすくわれ、「あっ!」と思った時には遅かった。後ろへ重心が移動したら、もう堪えられなくなり、『ああ、この世の終わりだ』と思った。その時、一緒に同行していたドライバーのおじさんが、ぱっと片手でおさえてくれた。 そうりゃそうだよね。こんな小僧に責任取らせるわけにはいかない。現場の責任者として見ていてくれたんだ。後ろを振り向くとおじさんはニコッと笑って、「あぶね〜、あぶね〜」と言った。そこの家のおばさん、僕に5,000円のチップをくれた。僕は、困っておじさんに目で訴えかけた。そうしたら、「小僧、もらっておけ!」と言ってくれた。 そんなバランスを崩した瞬間を表現してみた。

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美しく、輝く、輪を求めて。

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