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黄金のひらめき

2007年2月

上野で途中下車。
不忍池は、黄金に輝いていた。


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不忍池は、ハス池、ボート池、水上動物園の3つからできている。冬は、枯れた蓮の茎が、林立してあまり美しくないと思っていた。ところが、時計を見ると午後3時57分。なんと、西日を浴びたハス池の枯れ草が、黄金に輝いているではないか。

みなさん、アイデアって、どう浮かびますか?何時間も窓の外を眺めて、ぼーっ、としているうちになんとなく浮かびますか?それとも、机の脇に本を片っ端から積み上げて、なにかしらから、影響を受けますか?仕事のできる人は、すぐに次から次へとアイデアが出て、そうじゃない人は、何時間も何日も机にへばりついていても、一向にアイデアが出る気配がない。出たと思ったら、たったの1案。これじゃ、検証も議論もできませんよね。

そこで、僕は、10数年前にアイデアを出すレベルの標準化を目指し、システムを考えた。それからというもの、スタッフのみんなは、いろいろなアイデアを出すようになった。一番、大事なのは、アイデアを発表する勇気。否定されるかもしれないし、絶賛されるかもしれない。だから、その勇気をたたえ、絶対に否定してはいけないのだ。

まずは、「いいね〜!いいね〜!」と聞いてあげる。そこで、ダメだなんてすぐに答えを出さない。次に「ほかには?」と言うと、また次から次へと出してくる、それでも「ほかには?」「以上です」とやり取りがあり「では、今回のプロジェクトの目的や、ポジショニングや...」とあらゆる角度から検証して「どれにしようか?」と議論する。だから、だれも傷つかない。いきいきと発言し、お互いが触発して、さらに「はっ」と閃く。それを「降りてきた」と言うのですけどね。黄金に輝いている、不忍池を見て、閃いた瞬間のようだった。


黄金のバッドチューニング。



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投稿者 hidetoshi shinohara : 14:13 | コメント (12)

調子っぱずれな、ピアノ

2007年2月

あるホテルのロビーで、自動演奏ピアノがラグタイムを奏でていた。
これを聞いて、僕はセロニアス・モンクを思い出した。


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「Solo Monk」というこのアルバムは、1曲目から、ラグタイム調の「DINAH」という曲で、調子っぱずれなサウンドが、脳ミソをトロ〜リと、とろけさせてくれ、嫌なことを全て忘れさせてくれる。よきアメリカのミュージカルのように、スウィンギング!!ダンシング!!シンギング!!と思わず、満面の笑顔で両手を広げ、ひとり芝居。

ジャケットのイラストレーションは、僕の好きなプッシュピンスタジオのポール・ディビス。サウンドは、この絵のタッチにぴったりで、どこかトボケた感じの全曲ピアノソロ。


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こんな下手なのか、うまいのか、分からないと思っていた演奏でも、モンクの練習量は半端じゃなかったらしい。一曲を自分の解釈で納得いくまで、毎日毎日いろいろな角度から吟味してからじゃないと、人前では弾かないというのだ。

モンクの息子がドラマーとしてデビューして、父親とヴィレッジ・ヴァンガードで演奏した。その時の父親の音楽的アドバイスは、その1回きりだったそうだ。「ドラマーの仕事は、リズムキープだ。それがしっかりできれば、後は装飾品のようなもの」と言われた息子は、ちょっと不満だったようだ。

しかし、息子はそれまで聞き続けてきた父親のピアノの秘密がそこにあったことを知った。つまり、「最低限のことを完璧に行う」という父親の厳格な姿勢が、そこで初めて理解できたようだ。これはデザインにも通じるものがある。

晩年、モンクは体調を崩し、このアルバムはその時のもの。それを知ったら、まるでピエロのように、ミストーンではないかと思う位のバラついたサウンドとリズムは、もの悲しくもある。


ジャズピアノ、究極のバッドチューニング。



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投稿者 hidetoshi shinohara : 13:33 | コメント (8)

仙人のいる山

2007年2月

週末、スキーへ行った。
早朝4時の東京は、雨。関越道も雨だった。
月夜野で降りて、三国峠のトンネルを超えた頃には、雪に変わった。


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いつもの苗場は、濃霧で視界が悪い。リフトに乗っていると、横風が吹雪と一緒に頬を叩き付ける。頂上は、真っ白で何も見えなく、滑走禁止だった。数日前に雨が降ったのか、ゲレンデはアイスバーン。滑っていてもちっとも楽しくない。数本滑った後、プリンスホテルに戻る事にした。

苗場山の中腹を滑りかかった頃、霧の中に山々を見た。まるで水墨画のようだ。そもそも、水墨画は鎌倉時代に中国から日本へ禅とともに伝わったそうだ。もともと、禅の思想を表す絵画だったようだが、徐々に風景画も描かれるようになり、山水画と発展していったようだ。

日本では、室町時代が水墨画の全盛期となる。足利家が禅宗を庇護したこともあり、雪舟をはじめとする、多くの画僧を排出した。だから、水墨画を見ているとなんだか神々しくなるのだろうか?無彩色の世界は、実世界の喧騒からかけ離れた禅の世界だ。

しばし、寒さを忘れてこの無の世界へと没頭していると、精神が統一されてくるようだった。ポジティブ思考の僕は、『こんな悪天候でも収穫があった』と、気分が昂揚した。

こんな静寂した苗場は、バブルの時の賑やかさがウソのようだ。かつての華やかさはなくなったけど、もともと自然の風景は今も昔も変わらない。仙人もやっと静かにもとの生活に戻れることであろう。


スキー場のバッドチューニング。



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投稿者 hidetoshi shinohara : 02:47

これが、ブランドだ!

2007年2月

僕が、愛用しているLoweproロープロというカメラバッグ。
ファスナーが壊れたので修理に出したところ、新品と交換してくれた。


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そんなロープロのひとつで、大型キャリーバッグを持っている。これもカメラバッグなのだが、中にはさらにインナーバッグがあり、仕切りの多いカメラ用のインナーを外すと旅行用のキャリーバッグにも使える。空港で荷物を預けたら、外側の小物入れのファスナーが取れて壊れていた。購入店へ修理を依頼したところ、メーカーから本体まるごと交換して送ってくれた。保証期間はとっくに切れていたので、僕はとても感動した。

10数年前、アメリカ人の著者で「一回のお客を一生の顧客にする法」という本を読んで、これがブランドだと、ずっと思っていたから。仕事でも単に広告やデザインがいいだけではなく、消費者の視点から考えていくことをいつも提案しているのだが、本気で実行に移してくれる企業はほとんどない。今でも、広告やパンフレットのデザインを頼まれても、僕は、いつもブランドとは何かを熱く語る。でも、ブランディングという言葉が流行っているわりには、ほとんど理解されない。

消費者は、価格よりも大事なものを求めているというのに、企業は未だコストにこだわる。6〜7万円のバッグは、決して、高級ブランドとは言えないかもしれない。でも、このロープロという企業は、コストを優先せず、お客さんに感動を与えてくれた。

莫大な広告費をかけるより、こんなきめ細かな感動を与えてくれれば、きっとそのブランドのファンになるだろう。現に僕がそうであるように。世界にこんな感動を与えられた人がたくさんいるとしたら、広告経費よりも遥かにコス削減になり、将来的な収益となるに違いない。多くの企業は、ハードにはお金をかけるけど、ソフトにはかけない。成功の鍵はここにあるような気がする。


ブランディングのバッドチューニング。



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投稿者 hidetoshi shinohara : 21:59 | コメント (16)

東京にも空がある

2007年2月

ある平日の午後、車でお台場へ向かった。
何か大きなイベントでもあるのか、首都高のお台場出口は渋滞だった。
車は一向に進まないので、僕はカメラを取り、シャッターを切り出した。


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こんな渋滞でも『無駄に過ごすことはできない』とポジティブに考えるところが、僕のいいところでもあるのだ。いや、単に貧乏性なのかもしれない。すぐ、時間がもったいないと思ってしまうところが、ゆとりがないのかな。

高村光太郎の「智恵子抄」に出てくる、智恵子は「東京には空がない」と言った。「ほんとの空が見たい」と言った。智恵子は遠くを見ながら、「阿多多羅山の山の上に毎日出ている青い空がほんとの空だ」と言う。

東京の空は、智恵子の言う、青い空とは違うかもしれない。東京は、大きいものが勝つ、権威のあるものが強いという都市かもしれない。でも、この東京に住む人々は、どんなに地位や名誉の違いがあってもこの大空には太刀打ちできない。

僕は時々、地面の蟻を見ては「おい、こら、ここに巨人がいるのが見えないのか?」と注意したくなる。あんなにあくせく働いている蟻を思わず踏んでしまいそうになったからだ。

あのビルの中で働いている人達は、この大空に較べたら蟻と人間みたいにちっぽけな生き物。取引先やボスの顔色を見てあくせく働いている。この風景を見ていると、大きな黒い魔人が今にも都会の人々に襲いかかろうと忍びよってきているようにも見える。「こら、もっと大きな心を持ちなさい」と。これは、下を向いて携帯メールばかり打っている、都会人への警鐘だ。


都会の空のバッドチューニング。



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投稿者 hidetoshi shinohara : 18:01 | コメント (14)